フランス組曲 No.4 BWV815より / J.S.バッハ

バッハ縛りの後半はお互いのソロの後、6弦をEに上げて(前半からここまでずっとD-durかmollでした)フランス組曲第4番。組曲なのにプレリュードがなくていきなりアルマンドでスタートです。アレンジを迷って二種類作って、岩﨑さんにどちらがいいか決めてもらいました。出だしの音形をプレリュードっぽくアルペジオ風にするか、アルマンドの付点のリズムにするか。こういうのが編曲の醍醐味ですね。

フランス組曲のギターデュオ版の楽譜は昔からありましたが「ただ右手を1st,左手を2nd.に分けただけ」に感じたので、どちらのパートも対等に、まるで会話をしているように聞こえることを目指して楽譜にしました。

全曲だと結構長いので、今回はアルマンド、クーラント、サラバンド、ガヴォット、ジーグを演奏しました。

ピアノソナタ No.14 Op.27-2「月光」/ L.ベートーヴェン

3曲目、前半の最後はベートーヴェン。
“Sonata quasi una Fantasia”まるで幻想曲のようなソナタという添え書きがある第14番のピアノソナタ。「月光」と言うと日本のギター弾きはF.ソルのエチュードOp.35-22を想起しますが、このピアノソナタはドイツの音楽評論家、詩人ルートヴィヒ・レルシュタープがベートーヴェンの死後5年が経過した1832年、第1楽章がもたらす効果を指して「スイスのルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」と表現したことに由来する通称で親しまれています。

私は毎月「すたじおGランチタイムコンサート」というのをツイキャスで配信しています。毎回前半はプチジャンという19C.ギターでF.ソルの作品を順番に演奏したりというソロ、後半は下関市からわざわざお越しくださる中野義久さんとのデュオでここのところは横尾幸弘氏の編曲による作品をお届けしています。2024年8月のvol.85では月光ソナタの一楽章を演奏しました。

一楽章を弾いたら残りも弾きたくなって編曲しました。なので、第一楽章は殆ど横尾編です。少しだけ手を加えました。三楽章はピアニストにとっても難曲のようです(どっかの動画で100万人に一人しか弾けない、とか言ってるのはどうかと思います)が、二人で手分けしてなんとか弾いてみました。今回のコンサートが初お披露目でした。練習に一番時間がかかりました。岩﨑さんには負担をかけてしまいました。

間奏曲 Op.118-2 / J.ブラームス

2曲目はブラームスの名曲。

平野啓一郎さんの小説「マチネの終わりに」の第1章で主人公、天才ギタリストの蒔野聡史がデビュー25周年記念リサイタルをサントリーホールで開き、そのアンコールの二曲目として自身の編曲で演奏した、という設定になっています。
当日の演奏の中で唯一満足のいく出来で、小峰洋子さんとの出会いの場面で「アンコールのブラームス、編曲、素晴らしかったです。本当にうっとりしました」「グレングールドのピアノが好きでしたけど、これからは蒔野さんのギターで聴くことにします」と最大の賛辞を贈られた曲。

このブログにも書いていますが、私は「ギタリスト橋口武史と読むマチネの終わりに」という解説コンサートをしていますが(最近滞ってます)、第1回の時はこのブラームスはピアノの名曲だからギターでは演奏できない、小説の中だけのことだ、と思ってピアニストの中尾さんに演奏してもらいました。
ところが!そののち、鈴木大介さんがギター用に編曲した楽譜が出版されたのでギターでは弾けない、なんて言い訳ができなくなってしまいました。この音はどうしても必要じゃないかなあと思うところがあったので、イ長調からニ長調に移調するというアイデアはありがたく拝借して結局自分で編曲してソロで演奏していました。

しかし、やはり元がピアノ曲。鈴木大介さんが(おそらく泣く泣く)カットした音を復活させるとひっじょーに難しくなってしまい、流れが悪くなってしまってました。ギター二重奏にすると良さが出るんだろうけどなあ、とずっと思いながら弾いていました。

ギターデュオって大きく分けると2つのタイプがあると思います。演奏者の個性の違いをぶつけ合ってそれを楽しむタイプ、もう一つは、どっちが弾いているのかがわからないくらい、もしくは、まるで一人で弾いているかのようなデュオ。
一曲目のモーツァルトは前者のタイプの方が面白いと思いますが、このブラームスはロマン派のパーソナルな曲調なので後者じゃないと。そうなると共演者が限られてきます。同門と言えど、長崎ギター四重奏団のメンバー山口修、坂元敏浩、平戸健吉、いずれの先輩がたともちょっと違う。今、思いつく限りでは岩﨑さんが適任、と言うか岩﨑さんとしか弾ける自信がありません。

4月の橋口屋のときよりちょっと醒めた演奏になってしまった気もします。

中間部のコラールのような部分で内声を半音間違えてしまいました。大事な音なのに…

2台のピアノのためのソナタ K.448 (375a) / W.A.モーツァルト

2025/5/17、としま区民センター小ホールでの
「橋口武史&岩﨑美保DUOギターコンサート」の演奏です。

演奏者、編曲者の視点で解説してみます。

一曲目はモーツァルトの2台のピアノのためのソナタより第一楽章。

2022年7月にリサイタルした時のライブCDに入っているF.カルリのソナタOp.21-2を聴いてくれた岩﨑さんが「のだめカンタービレに出てくる曲と最初がおんなじ!」と教えてくれたのがこの曲です。

弾けるかな?弾いてみる?とりあえず編曲してみようか!ということでやってみました。

もとがピアノ2台(4手連弾ではなく)なので、演奏者二人が対等に掛け合い、天才モーツァルトが嬉々として作曲したような、鍵盤上を駆け巡るような音数も多いこの曲をギター2台で弾けるように編曲するのはなかなか骨が折れました。断腸の思いで音を減らして減らして出来上がった楽譜は、それでも技術的に演奏が大変でした。ギターで弾くとモーツァルトらしさが何だか出ないんですよ…

個人的にはまだ提示部なのに再現部に出てくる音を弾いてしまって我ながら慌てました。

橋口武史&岩﨑美保 Duoギターコンサート

2025年5月17日(土)としま区民センター小ホールで行われた「橋口武史&岩﨑美保DUOギターコンサート」は皆様のおかげで終了することができました。
あいにくの雨模様の中、また、同じ日にあちこちでギターコンサートが開催されている中、スケジュールを確保してお越しくださったみなさん、会場外から応援してくださったみなさん、ありがとうございました。

やるからにはトコトン、いつも全力投球の岩﨑さんは、お仕事で忙しい中、時間を捻り出して練習をされて、ひと月ほど前の橋口屋でのコンサートから更にレベルアップしていて「こりゃ、負けられんな!」と私も気合が入りました。
小学生の時から長崎ギター合奏団ジュニア、中学からは大人の合奏団でも、いろんなオーケストラ作品を演奏してきた二人なので、ベースとなる音楽性は共通していてアンサンブルには何ら不安がありません。モーツァルトって、ベートーヴェンって、ブラームスってこんな感じよね、という感覚は合奏団でシンフォニーやコンチェルトをみんなに混じって演奏してきた中で培われ、言葉にしなくても良さを共有できます。
その上、曲によっては私がソロで演奏しているものを聴き込んで癖をしっかり把握してくれていたり、演奏中の私のモーションを鋭くキャッチしてくれたりで、無理して合わせようとしなくても合ってしまいます。息がぴったりですね、という感想を頂くことがありますが、私の「鼻息」に合わせてくれています。
福岡と埼玉と物理的に距離があるので、なかなかリアルで練習できないのですがそれでもコンサートができるのは岩﨑さんだからです。

今回の会場は「とても響きが良い」と事前に岩﨑さんから聞かされていましたが、想像以上でした。立地もいい素敵な会場を手配してくださり、翌日は本番が控えていたのにステマネ、受付もお手伝いしてくださった岩﨑さんのギタ友、山下さんご夫妻には大感謝です。

岩﨑さんのやさしいやさしい旦那さん、連日長時間の運転ありがとうございました。コーナー抜けてから直進状態に戻る時の揺り返しが、車高が高いサンバーなのに全くないのは、さすがバイクで鍛えたセンスだな、サーキットで速いはずだ、と納得しました。

曲についての感想は岩﨑さんがyoutubeにアップした動画と共に書こうと思います。