ソナタ(L.ブローウェル)





All in Twilightと同じく、ジュリアンブリームのために書かれた。音色の指示(metálico,sul tasto)が細かいところも共通している。全体に引用が効果的に用いられている。1楽章の7小節目に出現するモチーフが曲全体を有機的に結びつけている。



第1楽章 ファンダンゴとボレロ

ファンダンゴもボレロもスペインの舞曲。「黒いデカメロン」にも見られたブローウェルの「増殖の書法」などを経て末尾部で突然《ベートーベンがソレル神父を訪ねる》という文言とともに交響曲第六番「田園」のメロディが引用される。


毎月一度ゲストとして「すたじおGランチタイムコンサート」に来ていただいているギタリスト中野義久氏から、決して突然ではなくファンダンゴのリズムが田園の伴奏形を連想させるところから繋がっているのではないか、との説を授かった。

ソレル神父とはスペインの聖職者、作曲家アントニオ・ソレル(1729~1783)のこと。D.スカルラッティ(1685 – 1757)に師事したと言われ、代表作は「チェンバロのためのファンダンゴ」。

類似したリズムを媒介にした、国も時代も超えた二人の作曲家の邂逅、というブローウェルのユーモア。

第2楽章 スクリャービンのサラバンド

スペイン起源の舞曲、サラバンド(後半のチェロ組曲にも出て来ます)の形を借りたロシアのピアニスト・作曲家アレクサンドル・スクリャービン(1872 – 1915)へのオマージュ。




オスティナート(反復音形)に乗せて幽幻の世界が繰り広げらる。


第3楽章 パスクィーニのトッカータ

ベルナルド・パスクィーニ(1637 – 1710)はイタリア・バロックの教会音楽の作曲家。



弦を摘まみ上げて破裂音を出す「バルトークピチカート」のテクニックや

パスクィーニの代表作「かっこう」のモチーフや

スクリャービンが戻って来たり

最小公倍数の面白さがあったりしながらクライマックスへ向かって疾走していく

投稿者: ギタリスト 橋口 武史

長崎出身で福岡に住む自然派クラシックギタリスト。

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