この記事はnoteに掲載したものと同じです
クラシックギターを愛する皆さん、こんにちは! 「いい演奏をするには」シリーズ第2回です。
第1回では、「いい演奏」とは技術レベルに関わらず、音楽への想いを音に乗せて伝えることだとお話ししました。では、その「想い」や「伝えたいこと」は、どこから生まれてくるのでしょうか?
その大切な源の一つが、楽譜に書かれた音符のさらに奥にある、音楽的な意味を理解するということです。そして、そのための手助けとなるのが「アナリーゼ」(楽曲分析)です。
アナリーゼって難しそう? いえいえ、音楽を深く知るためのツールです。
「アナリーゼ」と聞くと、専門家がやる難しい分析だと思われるかもしれません。確かに、音楽学的に高度な分析は存在します。しかし、ここで言うアナリーゼは、あなたが演奏する曲と、もっと仲良くなるためのツールだと考えてください。
楽譜に書かれているのは、音の高さ、長さ、強弱、速さなどの指示です。これは、言うなれば「設計図」のようなもの。でも、私たちはその設計図通りに「家」を建てるだけでなく、そこに住む人の暮らしや、どんな家具を置いたら心地よい空間になるか、といったことまで想像したいですよね。音楽も同じです。音符という設計図から、どんな景色が見えるのか、どんな気持ちが込められているのかを感じ取るのがアナリーゼです。
レベルに関わらず、どなたでもアナリーゼを始めることができます。例えば、
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曲を聴いて、どんな雰囲気かを感じてみる(明るい、暗い、穏やか、情熱的など)。
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一番心に残るメロディーはどれかを見つける。
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同じメロディーがどこかに繰り返し出てくるか探してみる。
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リズムに特徴があるか見てみる。
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使われている調(ハ長調、イ短調など)が、その曲の雰囲気にどう影響しているか少し考えてみる。
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曲のタイトルや、作曲家について調べてみる。
これだけでも立派なアナリーゼの第一歩です。楽譜を眺めながら、音を出さずに「この部分はどんな感じだろう?」と想像する時間を持つことも大切です。
アナリーゼがあなたの演奏にもたらすもの
アナリーゼは、あなたの演奏に様々な良い影響を与えてくれます。
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表現が豊かになる: 曲の構造やハーモニーの動き、旋律の特徴などが理解できると、「ここでクレッシェンドするのは、この盛り上がりに繋がるからだ」「ここの和音は、次に解決するから切ない響きなんだ」といった、音楽的な意味が分かります。そうすると、単に音符通りに弾くのではなく、自信を持って音楽的な表現ができます。
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暗譜の手助けになる: 曲の構成や、調性の変化などが分かると、楽譜の「地図」が頭の中に描けるようになります。これは、単なる音の羅列として覚えるよりも、はるかに効率的で忘れにくい暗譜に繋がります。
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解釈が深まる: 作曲家がなぜこのように書いたのか、その意図に思いを巡らせることで、あなた自身の解釈が生まれます。そして、その解釈を音に乗せることで、あなたの個性が光る演奏になります。
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練習の質が上がる: どこが音楽的に重要なのかが分かると、練習する際にも、ただダラダラと弾くのではなく、「ここのメロディーをどう歌わせるか」「ここのハーモニーをどう響かせるか」といった、より焦点を絞った練習ができるようになります(これは今後の回で詳しく触れます)。
アナリーゼは、難しい理論を知ることだけではありません。あなたが演奏する音楽と心を通わせるための、楽しく、そして奥深い対話なのです。
次回予告
第3回は、楽譜の理解を深めた上で、それを実際に「音」として表現していく方法に焦点を当てます。クラシックギターならではの音色の作り分けや、音楽に表情をつけるアーティキュレーションについて掘り下げます。どうぞお楽しみに!
感想や質問、「アナリーゼについてもっと詳しく教えて」という方はお気軽にコメント欄に書き込んでください。