こういう時には、何を弾くべきなのだろうかと考えた…自然と、耳の奥で音楽が鳴り始めて彼はギターを構えた。そしてヴィラ=ロボスの《ブラジル民謡組曲》の中から《ガヴォット・ショーロ》を演奏した。5分ほどの質朴な温かみのある曲で、彼は、ソファで足を組んで、寛いで演奏した。ガヴォットだから、元々は2拍子の踊るための曲だが、彼は、幾人かの親しい友人たちが、ゆったりと流れる午後の時間の中で、気軽な談笑に耽っている光景を思い描いた。そんなふうにこの曲を解釈したのは、初めてだった。

彼自身が、最近の何か面白い出来事を語り始めたギターに、微笑みながら耳を傾けているような気分だった。相槌を打ちながら、まさかと驚いたり、神妙に聞き入ったり、へぇと感心したり。….最後のハーモニクスの一音を蒔野は彼女を笑顔にさせるまじないか何かのように稚気を含んだタッチで響かせた。(p.140-141)

チラシに間違えて載せていました!ガボット・ロンド(それはバッハの無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番や今回後半で演奏する無伴奏チェロ組曲No.5)ではなくガヴォット・ショーロです。
ブラジルの大作曲家、エイトル・ヴィラ=ロボスが作曲した《ブラジル民衆組曲》の4曲目(1曲目:マズルカ・ショーロ、2曲目:ショティッシュ・ショーロ、3曲目:ヴァルサ・ショーロ、5曲目:ショリーニョ)。

「ショーロ」とはボサノバが興る以前のブラジルで流行していた音楽の形態。ショーロという名前は、ポルトガル語で「泣く」を意味する「chorar」からついたと言われている。 主に使われる楽器としては南米らしくギターは欠かせないが、フルートやカヴァキーニョ、パンデイロ、バンドリンといった楽器とのアンサンブルが基本。

ガヴォットはバロック時代に流行したフランス起源のダンス。バロック時代の組曲中の一曲としてもよく用いられる。

ショーロの多くはA-B-A-C-Aという三部形式の構造になっているが、ヴィラ=ロボスがガヴォットのリズムを借りて作曲したこの曲も例に漏れない。

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